紛れさせて



ひとつひとつの花には、実はそれぞれ、人の目には分からない個性があって、
清く正しい心を持つ花もあれば、醜い感情をひた隠しにしている花もあるのかもしれない。
でも、たとえそうであったとしても、こんなふうに多数に紛れてしまえば、
それらはどうしたって「美しい青い絨毯のような」という形容で一括りにされてしまう。
時々、それってちょっと羨ましいな、と思う。

ネモフィラの丘に紛れたら、わたしも上手く隠れることができるだろうか。




同時に、悩みだとか漠然とした不安だとか、その他見聞きしたくないあれこれを、
この花の中に埋もれさせて、見えなくなったらどんなにいいだろう、とも思う。
そんな異分子に入り込まれては、ネモフィラとしては大迷惑だろうけれど。
一昨年のゴールデンウイーク、ここ、ひたち海浜公園を訪れた時は、そんなこと考えもしなかった。
ただただ、目の前の見事な花畑に圧倒されて、なんて美しい!と感動しただけ。
当時の自分が、今のこの、ひねくれた物の見方をするわたしを叱ってくれたらどんなにいいだろう。
いつかまた、純粋に美しさを楽しめるわたしに戻りたい。

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Author : DPaT